ジュエリーの選び方

【宝石鑑定士の実体験】形見ジュエリーと向き合う私のリアルストーリーと後悔しないためのヒント

【宝石鑑定士の実体験】形見ジュエリーと向き合う私のリアルストーリーと後悔しないためのヒント ジュエリーの選び方

「これ、しまいっぱなしだったんです」そう言って渡されたのは、使い込まれた小さなジュエリーボックスでした。ほどけかけたリボン、鈍く光る金具。その中には、年季の入った指輪がそっと収まっていました。

このような場面は、私にとって決して珍しくありません。大切な人から受け継いだアクセサリー。でもどう扱えばいいのか分からず、そのまま年月だけが経ってしまう。宝石鑑定士として、そんな眠ったままの宝石と再び出会うたび、小さな物語に立ち会っているような気がします。

この記事では、そうした「形見のジュエリー」とどう向き合えばいいか、実際の相談事例を交えながらお伝えします。

形見ジュエリーが持つ目に見えない価値とは

実際にご相談を受ける中で、形見のジュエリーにまつわる悩みはとても多くあります。よく聞くのは、こんな声です。「処分してしまっても大丈夫なのか迷っていて…」「誰かに譲るにしても、使われないかもしれない」「デザインが自分の好みに合わなくて」

これらの言葉の裏には、「大切にしたい」という気持ちがあり、皆さん本当に困ってどうしたらいいかという切実な気持ちを抱えていらっしゃいます。

大切にしたい気持ち

大切にしたい気持ち

私自身も祖母からのジュエリーを受け継いだ時は、祖母の生きた証や、想いの深さを感じました。「どんな場面でつけたのかな?」「買ったときはどんな気持ちだったのかな?」と今は亡き祖母の若いころを想像して祖母のぬくもりが残っている気さえしたのもです。

また、私の人生にも影響を与えています。このジュエリーを大切に扱って、娘に引き継ぎたいですし、娘から下の代にも引き継いでほしいなとも思います。ジュエリーを通じて時代を超え、家系が繋がれるのはとても素晴らしいことだと感じます。

ジュエリーは世代を超えて引き継がれる

ジュエリーは世代を超えて引き継がれる

ジュエリーは洋服と違って劣化しないので、想いを受け継ぐには最適の品物です。私も宝石を購入する時は、「これは娘に譲ってあげたい」と想像しながら購入することもあります。そこに込められた「記憶」と「関係性」が、私にも娘にも唯一無二の宝物となると信じています。

形見ジュエリーを活かすための4つの実践アドバイス

私が実際に現場でアドバイスしている形見ジュエリーを後悔なく扱うための4つのステップをご紹介します。

①宝石の正体を知る

まずは正体をしる

まずは正体をしる

たとえば、あるお客様は「ただのガラスだと思っていた指輪が、実は希少なアレキサンドライトだった」と知り、驚かれていました。鑑定を受けることで、思わぬ価値や歴史が見えてくることがあります。

私自身も使っていて信用できる鑑定・鑑別機関は下記です。

GIA https://www.gia.edu/JP/gem-lab
CGL https://www.cgl.co.jp/

②次に託せる状態かをチェック

次に託せるかをチェック

次に託せるかをチェック

どんなに高価でも壊れていたら譲りにくいもの。逆に、手ごろなものでもメンテナンスされていれば大切にされやすいです。実際、私は修理やクリーニングを提案することが多いです。

通常は、購入したお店に持っていくと対応してくれますが、形見だとどこでどこで買ったかはわからないと思うので、東京御徒町のジュエリー街に持ち込むといいです。事前に電話して対応可能かどうかを確かめてください。

https://jto-net.com/

③リメイクで今の自分に合う形に

リメイクで今の自分に合う形に

リメイクで今の自分に合う形に

たとえば、祖母のブローチをペンダントに作り替えた方が「毎日身につけられるようになった」と喜ばれていました。形を変えても想いはそのまま受け継げます。一般の方だと、どこに持ち込んでいいかわからないので、上記の東京御徒町のジュエリー街に問い合わせてください。

④付属の紙類も大切に保管

付属の紙類も大切に保管

付属の紙類も大切に保管

古い保証書や鑑定書、海外のレシートなどは、後々の価値証明や思い出の手がかりになります。昔は書面で証明するというシステムがなかったので、ないものは鑑定機関に持ち込むことが可能です。

【体験談】形見ジュエリーが新たな家族の宝物になるまで

それぞれのケースへ私がどう対応したか、形見ジュエリーの取り扱い例を紹介します。形見のジュエリーには、残す・譲る・変える・手放す、すべての選択肢があります。どれが正しいというわけではなく、「ちゃんと向き合ったこと」自体に意味があります。

【体験談1】:母の形見リングが親子三代の絆に生まれ変わった話

私が印象深く覚えているのは、Hさんという女性のご相談です。Hさんは「母の形見のガーネットの指輪を、娘に何か形を変えて贈りたい」とご来店されました。その指輪には、Hさんが幼い頃に母と一緒に出かけた思い出が刻まれていたそうです。

形見のガーネットリング

形見のガーネットリング

私は「娘さんの誕生石に合わせてリメイクしては?」とご提案しました。実は、娘さんの誕生月が1月で、ガーネットはその誕生石。リモデル後、娘さんは「おばあちゃんの石だと思うと、すごく特別!」と涙を浮かべて喜んでくれたそうです。

リメイクしたガーネットリング

リメイクしたガーネットリング

【体験談2】:母のネックレスが宝物に変わった日

友人の40代前半のMさんから「これ、母からもらったんですけど…正直、よく分からなくて。」と相談を受けました。手にしていたのは、一見何の変哲もないホワイトゴールドのネックレス。トップには控えめなブルーの石が一粒だけ。

ブルーの石のネックレス

ブルーの石のネックレス

「ずっと引き出しに入れっぱなしだったんです。ある日、娘が『ママ、それ可愛いじゃん』って言ってくれて。久しぶりに出してみたんです。」ルーペで確認すると、ネックレスの留め具には「Pt950」の刻印が。そしてトップの石は、非加熱処理のブルーサファイアでした。

それを伝えると、Mさんの表情が一変。「え…本物なんですか? そんな価値があるとは思ってなかった。」Mさんはネックレスを握りしめ、「これからはちゃんと身につけていこうと思います。」と優しく笑いました。

【体験談3】:「捨てられなかったイヤリングに、新しい役割を」

大学の先輩の50代のTさんが「母の形見なんです。自分にはどうにも使い道がなくて。でも、どうしても捨てられなくて20年以上引き出しにしまったままなんだけど、どうしたらいい?」とパールのイヤリングを見せてくれました。

形見のパールイヤリング

形見のパールイヤリング

「実は、姪が大学を卒業するから、お祝いに何か贈ろうと考えていたんだけど、リメイクできる?」とTさん。

私は「それなら、リングにリメイクするのはどう?」とご提案しました。片方のパールには目立つ傷があったので、1つだけを生かす方法でした。Tさんは「そんな風に生かせるなら母も喜ぶ気がします。」と納得されました。

完成したリングは、繊細な模様を残しつつ、今風のフォルムに。後日、「姪が『かわいい!しかもおばあちゃんの?宝物にするね』って言ってくれたんです」と報告がありました。

リメイクしたリング

リメイクしたリング

まとめ:宝石に刻まれる時間と想いの大切さ

ジュエリーは単なる宝石ではなく、人生の物語そのものです。私自身、数々のご相談を受ける中で、「形見ジュエリーとどう向き合うか」に正解はないと感じています。大切なのは、迷いながらも自分なりに向き合った時間そのもの。

もし、今まさに形見ジュエリーをどうしようか悩んでいる方がいたら、ぜひ一度手にとって、その重みや温かさを感じてみてください。きっと、新しい一歩を踏み出すヒントが見つかるはずです。

形見ジュエリーで片方だけのピアスやイヤリングがあったら、こちらの記事も参考にしてください。

https://www.ilpalazzovenezia.com/2942.html

 

 

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